プロジェクトタイトル
地域コミュニティにおける持続可能な発展のための責任ある観光マネジメントに関する研究―マレーシアと日本の視点から
研究ユニット
代表者
メンバー
プロジェクト期間
2024年5月10日 ~ 2025年3月31日
プロジェクト概要
観光産業は、マレーシアと日本において最も急速に成長している経済活動の一つである。観光産業の持続可能な発展を評価するスケールは既存研究に多く取り上げられているが、持続可能性は文脈の違いによる価値観の違いと意味の曖昧さを依然として含んでいるため、地域コミュニティの持続可能な発展は責任あるマネジメントの視点を通して理解する必要がある。従って、本プロジェクトは責任ある観光マネジメントにおける指標をさらに探求し、地域コミュニティの持続可能の発展に影響を与える指標の内的関連性を、巨視的かつ微視的な側面から検証するものである。
成果報告
本プロジェクトは責任ある観光発展と持続可能な観光発展について、クチン市(マレーシア)と白浜町(日本)でそれぞれ10名ずつ半構造化インタビューを行った。具体的に、以下の質問項目に基づき、回答者に責任ある観光に対する理解を尋ねた。
- 責任ある観光(Responsible Tourism)と持続可能な観光(Sustainable Tourism)の違いはあると思いますか?
○ もし「ある」と答えた場合、観光における「責任」と「持続可能性」をどのように理解しているかを尋ねます。
○ もし「ない」と答えた場合、責任ある観光と持続可能な観光が同じだと考える理由を尋ねます。 - 白浜町の観光を発展させるためには、どのようなステークホルダーが関与すべきだと思いますか?(その理由も含めて) 旅行者と地域の関係⇒旅行者は、地域のターゲットではない
○ この質問を通じて、参加者が地域社会の役割をどのように理解しているかを知りたいと考えています。
○ ここでの地域社会は「ターゲット」ではなく「パートナー」として扱われるべきです。(特に旅行者) - 各ステークホルダーはどのような役割を担うべきだと思いますか?
○ 「責任(Responsible)」を語る際に、まず「誰が(WHO)」を明確にする必要があるため、この質問をします。誰がどんな責任を果たすのか?
○ また、責任ある観光では「旅行」は「目的」ではなく「行動?振る舞い」として捉えられるため、旅行中に果たすべき責任についても尋ねます。 - あなたの経験をもとに、人と白浜町のより良い未来のために責任ある観光地や観光ビジネスをどのように発展させることができるでしょうか?(トリプル?ボトム?ラインの観点から)
○ この質問では、異なるステークホルダーがどのように協力できるかを探ります。
○ 具体的には、信頼性(reliability)、優先順位(priority)、目的地の状況(situation of destination)などについて考察します。 - 責任ある観光の実践について、あなたの経験や具体例を共有していただけますか?
○ 参加者に、責任ある観光の実践に関する自身のエピソードを共有してもらいます。
○ そのエピソードは、ポジティブなものでもネガティブなものでも構いません。
また、持続可能な観光について、以下の質問を行った。
- 観光客の行動や意識が地域社会にどのような影響を与えていると感じますか?
⇒ 観光客が地域の文化や環境を尊重しているかどうか。
⇒ 地域の過密化、騒音、文化の商業化に対する対策。 - 地域の観光業が、地元住民にどのような恩恵をもたらしていますか? 観光に関連する活動が、地域社会に対する社会的な格差を広げる可能性はありますか?
⇒ 雇用創出や、地域コミュニティへの利益還元。
⇒ 観光業による富の偏在や、地元住民が観光地として感じる疎外感など。 - 地域の観光産業が持続可能な経済成長にどのように寄与していると感じますか?
⇒ 「長期的な収入源の確保や、地元の中小企業の活性化。 - 観光業の発展によって、地域経済の多様化が進んでいますか? 観光業に依存しすぎることで、地域経済にどのようなリスクが生じる可能性があると思いますか?
⇒ 観光以外の産業との連携や、経済の一極集中を避けるための取り組み。
⇒ 経済の脆弱性、シーズナリティ(季節変動)による収入の変動。 - 地域の観光業が、自然環境や生態系にどのような影響を与えていると感じますか?
⇒ ポジティブな影響(保護活動支援など)とネガティブな影響(環境負荷や生態系の乱れなど)。
現在、インタビュー調査の結果を分析し、2025年度にInternational Journal of Tourism Research,Journal of Sustainable Tourismへの投稿を準備している。